最もディープな『言葉のクロッキー』の秘密

『言葉のクロッキー』の「クロッキー」は、絵画の用語ですばやくさくっとモノの輪郭や本質をつかまえて描くことである。
デッサンには、「線をいっぱい引いて試行錯誤して探す」、というイメージが強いので(少なくとも素人には)すっきりとしたこの言葉にした。

絵画や文章の表現のプロセスを仔細にみると、

  1. 一瞬でモノをつかまえる
  2. つかまえたものを自分の中で整理し発酵させるのに時間をかける
  3. 描き始めたら躊躇いなく仕上げる

これが理想だ。

とくに3.描きだしたら躊躇わないクセをつけることは重要だ。
「描き始めたら躊躇いなく仕上げる」
言葉でいうと、一行だが、身体にしみるまでには時間がかかる。
悪いクセ、つまり描き始めたあとでもコネるクセがついている人が多い。

『言葉のクロッキー』は、その部分をあらかじめ、スタイルの中に組み込んである。課題が届いても、すぐに書いてはよくない。少なくとも一晩、じっくり自分の中で発酵させる。
書き始めたら30分以内で書く。

これは弓道の「当ててから放つ」にヒントを得たものだ。
心の中で書き上げてから、実際に書き出すのだ。

慣れると文章を書くのが速く的確になる。
机、バソコンの前でうんうん唸っている時間が少なくなる。
通勤通学、料理、食事などの合間の一瞬に、ふと浮かんだアイデアを取り込むのがうまくなる。あらゆる時間の隙間が創造の時間になる。

だから、課題編から解説編の間のインターバルがある。
アイデアの質を高め、発酵させる時間の密度が濃厚になれば、それだけ身の詰まった文章を書くことができる。

この時間についての意味をさらに深めよう。
いま、僕は身体の探求を仕事にしている。
だからそこで発見したことを加味したい。

最近、人の記憶の一部は身体に眠っていることを発見した。
言葉の記憶は頭脳に残る。
しかし、感情のエネルギーの記憶は身体に残る。
通常、感情は言葉と結びついている。
「悲しい」というのは言葉だ。
しかし、人が悲しいときに起きている感情の本質はエネルギーだ。
言葉はそれを指示し、呼び出すインデックスに過ぎない。

インデックスとエネルギーは別々に保存される。
悲しいできごとを言葉で思い出す。
次にインデックスに結びついた感情が召喚され、エネルギーが再生される、
よく観察すると、ほとんど同時にこの二つが起きている。

文章のアイデアを練るときには、このように身体に眠っている記憶も揺り起こすのがいい。
言葉というインデックスの順列と組み合わせを考えることではなく、自分の内側のエネルギーとの交流から新しい可能性を見出す。
そこに一つの化学変化が起きる。
それを爆発的に使って行く。
文章を書く前に課題に触発された身体の記憶をよく呼び起こしておくと、感情のエネルギーの乗った力強い文章が書ける。

こういう考えに慣れない人には難解かもしれない。
いますぐにわからなくてもいい。
これからクロッキーに挑む人は、このことをちょっと頭に入れておいてほしい。
課題が出てから書くまでのインターバルがより意義深く感じられるだろう。

一つの秘伝を打ち明けた。

村松恒平

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